『スタンド』という病~スタンドの素質と遺伝についての一考察~
アニメジョジョでついに「矢」の話が出てきたので、このついでにツイッターで呟いていたスタンド考察をまとめようかと思います。
荒木先生は「時を超えて血族に受け継がれるもの」を描いてるわけなんだから、そりゃ現実世界で時を超えて血族に受け継がれる遺伝子疾患とスタンド能力が似てるっていうのは当たり前なんだけど、それでもスタンド能力は遺伝性疾患≒“病”としての側面があるんじゃないかって話はしたい
— しおだまり (@enachiot) March 22, 2018
今回のネタはこのツイートに連なっているツリーの内容とほぼほぼ一緒ですが、自分で毎回ツイート発掘してくるのが面倒くさいので記事にします。
なお、それらしいことを書いていますが、筆者は医学専門ではないので付け焼刃の知識であることをご了承ください。
作中で言及されていること
まずは作中で言及されていること/確認されていることをまとめていきます。
①『スタンド使いには先天性/後天性の者がいる』
スタンド使いには、生まれたときからスタンドを持つ「生まれつきのスタンド使い(先天性スタンド使い)」と、後天的にスタンドを獲得した「後天性スタンド使い」がいる。
「生まれつきのスタンド使い」の内、8部における岩人間は90%がスタンド能力を持つとされている。
また、「生まれつきのスタンド使い」の中には、家族にスタンド使いを持たない例もある(花京院、ポルナレフ)。
②『スタンド能力は遺伝する』
劇中では現時点まで「スタンド使いの子どもだがスタンドを持たない・見えない」ケースは(筆者の記憶の限りでは)確認されていない。
また、父親だけが後天性のスタンド使いでも、「スタンドの素質」や「スタンド能力」は遺伝する。(ホリィ・トリッシュ・徐倫)
③『スタンドの素質は外的要因によって開花することがある』
スタンドを視認できる「スタンドの素質」だけが開花し、「スタンド能力」が開花しないものもいる(ホリィ・康一・トリッシュ・徐倫)。また、これらの「スタンドの素質」保持者は、トリッシュを除いて外的要因によって「スタンドの素質」を得ている。
④『波紋とスタンドは地続きのものである』『波紋の素質は遺伝する』
ジョセフは後天的スタンド使いだが、先天的波紋使い。また、ジョセフは波紋の素質をジョナサンから隔世遺伝している。
また、波紋とスタンドが地続きのものであることは、ジョジョニウム巻末で荒木先生が言及している。
以上のことから、今回筆者は『スタンド能力は遺伝子異常から発現する“遺伝子疾患”である』『同様に、波紋の素質とスタンドの素質は同一の遺伝子異常である』という一考察をしました。
スタンド能力遺伝子疾患説とその根拠的なもの
先述した原作で言及されていること/確認されていることを、現実世界の事象と結びつけて考えてみると、驚くほど遺伝子疾患のそれと一致します。
冒頭に乗せたツイートの通り、荒木先生は「時を超えて血族に受け継がれるもの」を描いてるわけなんですから、そりゃあ現実世界で時を超えて血族に受け継がれるものである、遺伝子疾患とスタンド能力が似てるっていうのは当たり前なんですが、それでもスタンド能力は遺伝性疾患≒“病”としての側面があるんじゃないかって話がしたい、それだけです。
以下、つらつらと書いていきます。
①『スタンド使いには先天性/後天性の者がいる』
遺伝子疾患は両親に原因となる遺伝子異常が無くても、子どもの遺伝子が突然変異して発現する場合がある。
つまり、スタンドの素質が遺伝子に含まれると考えると、花京院やポルナレフは『突然変異の』先天性スタンド使いではと考えられる。
また、岩人間は90%が生まれつきスタンドを持っている。これは、種族としての遺伝子にスタンドの素質の型が含まれていると考えられる。
後天的スタンド使いの多くは、「矢」「悪魔の手のひら」「壁の目」といった外的要因によってスタンドの素質を得ている場合が殆どとなっている。
遺伝子は放射線や強いストレスなどの外的要因によって変異する場合がある。矢などは遺伝子に異常を起こし、後天的にスタンドの素質を生み出しているのでは?
②『スタンド能力は遺伝する』
遺伝子疾患の素因は、遺伝子の異常として子孫に受け継がれていく。
父親だけが後天性のスタンド使いでも、「スタンドの素質」は遺伝する。非常に強い優性遺伝(顕性遺伝)だと考えられる。
③『スタンドの素質は外的要因によって開花することがある』
遺伝子疾患には、複数の遺伝子異常と環境条件が揃った時に初めて発症する(予防できる)ものがある。康一、トリッシュ、徐倫のようなスタンドの素質だけではスタンド能力が発現しなかったケースは、これと似ている。
④『波紋とスタンドは地続きのものである』『波紋の素質は遺伝する』
ジョセフは後天的スタンド使いだが、先天的波紋使い。また、ジョセフは波紋の素質をジョナサンから隔世遺伝している。つまり、波紋の素質とスタンドの素質は同一の遺伝子異常なのでは?と考えることもできる。
また、DIOはジョナサンの身体を奪い、後年「矢」に刺されることでスタンド能力が発現している。
(メタ事情を抜きにすると)ジョナサン(の体)はスタンド能力発現には至らなかったもののスタンドの素質=波紋の素質を持っており、「矢」による更なる遺伝子異常によってスタンド能力が発現したのでは?
更に付け加えれば、スタンド能力はぱっきりした遺伝子疾患ってわけではなく、それこそ自閉スペクトラム症みたいなスタンド使いと非スタンド使いは地続きでグラデーションになっている…みたいなモデルじゃないかとも思います。
実際スタンドの素質持ちでも康一くんはスタンド見えたけど、他の二人は見えなかったわけですし。
また、少し脱線すると、「花京院のルーツが昔「あやかし」とされていたものにあったらいいよね」とかオカルト妄想も実はしていたりするんですが、オカルトって昔での精神障害や遺伝子疾患のありかたじゃないかと思ってるので、今回の考察とは自分の中では地続きだったりします。(この話もしたい)
以上、スタンド好きの一考察でした。
メギドの元ネタさっくり調べてみた④いつメン編(後編)
前回:SAKEイベントのいつメン不在感新鮮だったね
メギドがどこまで元ネタ…悪魔伝承などなどを踏まえているか気になったので、この際調べてみることにしました。
目指せ全メギド制覇!(多分無理)
というわけで今回は、祖メギド編最初ということで、いつメンこと初期メンバーより「バルバトス」「シャックス」、1章追加メンバーの「ガープ」「マルコシアス」について取り上げてみようと思います。
なお、筆者はこのあたりの専門ではないうえ、インターネットと一部書籍を中心に「さっくり」知らべた情報なので、その辺りはご注意願います。
バルバトス
メギドNo.8、主に笛吹く吟遊詩人・バルバトス。某ゲーで1秒間に44本殺されたことで非常に有名ですね
エノク書のデーモン及びソロモン72柱の一人で、地獄の30の軍団を率いた伯爵兼公爵であるとされます。また、中世の神学者には、かつては天界で主天使または力天使の地位にあったと主張されたそうです。まさかの元ハルマ説。
自らの率いる軍団の先頭に立ち、射手か狩人の姿で森に現れるとされています。『地獄の辞典』では、「地獄のロビンフッド」なる異名が挿し絵につけられていたり。
鳥や雄牛などといった動物の鳴き声による占いの達人であり、友人同士のいさかいの調停役も務めるとされています。もしかしたら一行のバランサー的な役割が多いのはこの辺りもある…のかもしれない。
また、メギド体で構えているホルンは、『地獄の辞典』にある「四人の王が彼の前でホルンを奏でる」の記述からの連想だと思われます。自分で奏でてるじゃんというツッコミはなしで。
シャックス
メギドNo.44、鳥頭ことシャックス嬢。スコクス、スコックス、シャクスなどなど表記があるようですが、メギド72ではシャックス表記になっています。
(『地獄の辞典』『悪魔の事典』のどっちにも「シャックス」表記はなかったのだけど、どこから取ったんだろう…Wikipediaは「シャックス」表記だったけど)
ソロモン72柱の一人で、30の軍団を率いる地獄の公爵兼大侯爵であるとされます。
メギド72ではやたら「不幸」が強調されていますが、原典ではとくにそういう能力を持っているわけではなく、召喚した者のために金を盗んだり、隠された財宝のありかを教えたりといった能力を持っているとされています。メギド体が地図を持っているのは、後者の能力からでしょうか?
また、劇中では「鳥頭」扱いですが、原典ではむしろ召喚者に対しても嘘を吐き、魔法の三角形に閉じ込められないと本当のことを話さないという、狡猾かつやっかいな悪魔であるとされています。
けっこう原典伝承から違いのあるシャックスですが、鳥(コウノトリ)の姿で現れるというところは変わっていません。ずいぶん可愛くなっちゃっているけど。
ガープ
メギドNo.33、全国n百万人(推定)のモンモンの息子・ガープ。
筆者の推しメギド筆頭です。うおーッ!息子ーッ!
タプ、タップ、ゴアプと呼ばれることもありますが、メギド72ではガープ表記です。
エノク書のデーモン及びソロモン72柱の一人で、60の軍団を従える地獄の大総裁、そしてエノク書では「四方のデーモン」の一人として伝えられている、非常に地位の高い悪魔です。さすがおれたちの息子だ。
ちなみに、かつては能天使の階級にあったが堕天したという説もあります。嘘だろ息子。
正午の時のみ、4人の王を伴った人間の姿で現れるとされていますが、本当の姿は翼と2つの角を持った悪魔らしい悪魔の姿(メギド72のエネミーではデーモン系に近い)であると伝えられています。これは、コラン・ド・プランシーの『地獄の辞典』の影響が大きいそうな。
能力も、人を無知にしたり逆に教養を与えたり、使い魔を奪い取る、過去・現在・未来の出来事について答える、召喚者を瞬間移動させると多岐にわたっています。さすがおれたちの息子だ。
「四方のデーモン」は劇中の「フォルマウスの四冥王」の元ネタであると思われます。
これはエノクのデーモンについての文献に記載されている悪魔のリストで、悪魔学者であるレギナルド・スコットによれば、アマイモンが東の王、ゴルソン(コルソン)が南の王、ジニマルが北の王、ガープが西の王であるとされています。
一方で、東の王がウリクス、南の王がアマイモン、西の王がパイモン、北の王がエギュンであるとするリストもあるようですが、フォルマウスの四冥王の描写を見る限り、メギド72で採用されているのはスコットの説でしょう。
ちなみに「フォルマウス」の方は文献・インターネット共に元ネタが見つかりませんでした…そもそも何語かも不明なので、もしかしたらメギドラルの地名としての造語なのかもしれません。
マルコシアス
メギドNo.35、私本性獣嵐如破壊力!ことマルコシアス。一部の文献ではマルコキアス、と呼ばれることもあるそうです。
エノク書のデーモン、そしてソロモン72柱の一人であり、30の軍団を率いる地獄の大侯爵であるとされています。
エノク書ではグリフォンの翼と蛇の尾を持つ牝狼の姿で現れるとされており、メギド体のデザイン、そして転生後の女性の性別設定はここから取られていると考えられます。また、先述の悪魔学者・スコットによれば、人間の姿で現れるときには長身の騎士の姿で現れ、あらゆる質問に忠実に答えるとされています。
加えて、元は主天使の地位にあったとされており、グリモア『ゴエティア』『悪魔の偽王国』ではソロモン王に第七の玉座(神の住居とされるところ)に戻りたかったと話す描写があるそうです。
ちなみに、イベントで共演したアンドレアルフスとの原典での接点はそこまではなく、同じソロモン72柱であること程度でした。意外。
という感じで、メギドの元ネタ「さっくり」調べてみた、いつメン後編でした。
そういえば地獄の地位に関する話をし忘れたので、次回余裕があったら入れますね。
こんな感じでさっくり気ままに調べていきたいと思うので、よかったら今後もよろしくお願いします。
もしここの元ネタこれだよ!とかここ間違ってるで!とかありましたら、コメント頂けると嬉しいです。
【参考文献(インターネット以外)】
悪魔の事典(1992・青土社)
著:フレッド・ゲディングズ 訳:大瀧啓裕
地獄の辞典(1990・講談社)
著:コラン・ド・プランシー 訳:床鍋剛彦
メギドの元ネタさっくり調べてみた③いつメン編(前編)
前回:アガリアレプトさん復刻まだかな
メギドがどこまで元ネタ…悪魔伝承などなどを踏まえているか気になったので、この際調べてみることにしました。
目指せ全メギド制覇!(多分無理)
というわけで今回は、祖メギド編最初ということで、いつメンこと初期メンバーより「ブネ」「ウェパル」「モラクス」について取り上げてみようと思います。
なお、筆者はこのあたりの専門ではないうえ、インターネットと一部書籍を中心に「さっくり」知らべた情報なので、その辺りはご注意願います。
本題に入る前に、そもそも「祖メギド72柱」ってなんなの?という話に触れておこうと思います。
様々な伝承・宗教等を出典に持つ真メギド達と異なり、祖メギド72柱は全員、ソロモン王の作とされるグリモア(魔術書)『レメゲトン』の第一章『ゴエティア(ゲーティア、ゴーティアとも)』を出典に持ちます。俗に「ソロモン72柱」「ソロモンの霊(Spirit of Solomon)」と称される悪魔たちです。タイトルの「メギド72」の「72」という数字もここから取られています。
だけど本によってリストにブレがあるので本当は72柱以上あるのは内緒だ。
さらに掘り下げると、『レメゲトン』(だけでなく他の悪魔学文書)も、黙示文学の『エノク書』…を騙る文献(偽エノク文献)に記された悪魔に関する記述の影響を受けているとされており、ソロモン72柱の悪魔の中でも、エノク書にも記述のある悪魔(以下、エノク書のデーモン)はかなり古い悪魔たちといえます。
ソロモンと悪魔の話をもう少し掘り下げると、伝説によれば、ソロモンが72人の謀叛のデーモン王を集め、真鍮の容器に封じ込めて深い湖に投げ込んだことが始まり。その後、その容器はバビロニア人によって見つけ出され、破壊されたことでデーモンたちは解き放たれ、最も強大なベリアルが崇拝されるようになったそうです。
(少しストーリーに触れる話ですが(以下白文字)ベリアルが最初の追放メギドという設定は、おそらくこの伝説からでしょう。)
また、これらソロモン72柱は、それぞれに記号が与えられていることでも有名です。某ヘブライ語しか聞こえない漫画読者ならコミックス扉絵で見覚えがあるかもしれません。
メギド72では記号が使われている分かりやすい痕跡はありませんが、もしかしたら隠されているかも…?(知らんけど)
それではいよいよ本題レッツゴー。
ブネ
メギドNo.26、みんなの頼れるヒロインブネさん。
ソロモン72柱・エノク書のデーモン双方に名を連ねる古い悪魔の一人で、『レメゲトン』をはじめとする多くのグリモアでは、地獄の30の軍団を率いる悪魔の「公爵」であるとされています。
召喚されると、人・グリフォン・犬の頭を持つドラゴンまたは獣として現れるとされていますが、『悪魔の偽王国』では一つの頭が人間に似ているとだけ言われていて他の二つには言及がなかったりします。メギド体がドラゴンの姿なのはこの辺りから取られていると考えられます。
能力は会話・智慧の獲得・死の呪文の支配とされており、エノク書のデーモンのリストでは「死者に居場所を変えさせ、死者の墓に悪魔を集める」とされています。
…列攻撃とか覚醒減関係ないな…
また、タタールの魔法使いは、ブネに従う悪魔(魔神)たちをブニと呼び、極めて有害な存在として恐れていたそうです。自分は新人モンモンなのでブニさんのことはミリしらなのですが、ブニさんがブネの元配下?とされているのはこの辺りの記述からでしょう。
ウェパル
メギドNo.42、メギドが誇るスーパークールビューティー・ウェパルさん。ヴェパール、セパールとも呼ばれるそうですが、メギド72ではウェパル表記になっています。
ソロモン72柱の一人で、地獄の29の軍団を率いる公爵であるとされます。
召喚されると人魚の姿で現れるとされており、メギド体は伝承に忠実なものであることが分かります。また、ソロモン72柱では、グレモリーと並んで「女性体で現れる」と明言された数少ない悪魔です。
能力も水に関わるもので、海を支配する力を持ち、命じられれば嵐を起こしたり船を沈めたりとダイナミック。また、船の幻を作り出したり、人間に有毒な傷を与えて苦しめることも可能だそうです。その一方で、水に関わる者すべての守護者であるともされており、何だかんだスケールの大きい悪魔です。
また、グリモア『悪魔の偽王国』によれば、自分の与えた傷を治す力を持っているとされており、奥義「セイレーンの涙」のHP回復はそこから取られたものかもしれません。
ちなみにセイレーン(セイレン、シレーヌとも)は上半身が人、下半身が鳥または魚とされるギリシア神話の怪物。『地獄の辞典』ではウェパルはシレーヌの姿で現れるとされており、奥義名もおそらくここからでしょう。
モラクス
メギドNo.21、元気と肉がトレードマークのモラクスくん。フォライー、フォラクスと呼ばれることもあるそうですが、メギド72ではモラクス表記。
ソロモン72柱の一人で、36の軍団を率いる伯爵にして総裁であるとされます。
雄牛の頭をもつ人間の姿で現れるとされていますが、これにはギリシア神話のミノタウロスが関係しています。ミノタウロスは元々悪魔とは関係のない伝承でしたが、ダンテが『神曲』の地獄篇において取り上げたことで悪魔学の文献で扱われるようになり、それに伴って似た近しい概念であったモラクスも悪魔学に取り込まれた…という経緯があるそうです。メギド体の姿、そして奥義の「ミノスの大戦斧」、贈り物の「アステリオスの兜」はここから来ているのでしょう。
(アステリオスはミノタウロスの異名、ミノタウロスは「ミノスの牛」の意)
また『地獄の辞典』には、同じく牛の頭を持つ悪魔・モロクについての記載があります。モロクもまた、子供の生け贄を求める悪魔であり、地獄の宮廷において涙の国の君主および騎士団の指揮官を務めているとされています。
…直接モラクスが子どもの生贄を求めるという記述はありませんが、関連する悪魔や伝承が子どもの生贄を求めるものばかりなのに、モラクスくんは子どもの姿というの、何かこう…ありますね。
という感じで、メギドの元ネタ「さっくり」調べてみた、いつメン前編でした。解説も入れたのですごい長くなってしまった…。
こんな感じでさっくり気ままに調べていきたいと思うので、よかったら今後もよろしくお願いします。
もしここの元ネタこれだよ!とかここ間違ってるで!とかありましたら、コメント頂けると嬉しいです。
【参考文献(インターネット以外)】
悪魔の事典(1992・青土社)
著:フレッド・ゲディングズ 訳:大瀧啓裕
地獄の辞典(1990・講談社)
著:コラン・ド・プランシー 訳:床鍋剛彦
メギドの元ネタさっくり調べてみた ②三人娘(?)編
前回:サバトダメでした(三馬鹿編)
メギドがどこまで元ネタ…悪魔伝承などなどを踏まえているか気になったので、この際調べてみることにしました。
目指せ全メギド制覇!(多分無理)
というわけで今回は、三馬鹿と対になっているけど三馬鹿的な通称のない三人娘(三人娘でいいのでは?)「サキュバス」「リリム」「アガリアレプト」の3人の元ネタから。
なお、筆者はこのあたりの専門ではないうえ、(現時点では)インターネットを中心に「さっくり」知らべた情報なので、その辺りはご注意願います。そのうち書籍情報を盛り込みたい。
サキュバス
おそらくこの3人の中ではトップクラスの知名度を誇り、古今東西様々な創作物で登場している悪魔・サキュバス。
出典は民間伝承やキリスト教に登場する女性型の「夢魔」。「サキュバス(サッキュバス)」としての名前が出てくるのは中世頃からだそうで、古代ローマ時代から言及があるインキュバスと比べると新しい悪魔ということになるのかな?
インキュバスは男性とゴニョゴニョする悪魔ですが、メギド72ではインキュバス同様性的な側面には触れられず、「夢を操る悪魔」としての側面が強調されています。実際、サキュバスの伝承でも夢でしか会えないといったものがあったり。
衣装やメギド体のデザイン、スキル・奥義名などにはあまり元ネタ反映は見当たらないカンジ。むしろコウモリの羽や尻尾といった、典型的なサキュバスのデザインからあえて大きく外してきている感じが個人的には見て取れます。(メギド体の頭に角があるのは典型例と近いけど、角あるメギド多いからなあ)
リリム
「リリン」表記だと某アニメ好きの人にはピンと来るかな?な悪魔。地属性なのでパターン青ではない
メギド72では「リリム」表記が正式名称となっています。
出典はユダヤ教・キリスト教における悪魔。
リリスが魔王サタンとの間にもうけた子の総称であり、ユダヤ教では最初のデーモン(ユダヤ教・キリスト教における人間を誘惑したり、苦しませたりする悪霊)となったとされています。真メギドの1番なのは、きっとこの『最初のデーモン』のあたりからなのかもしれません。
その性質は新生児を襲ったり、睡眠中の男性を誘惑したり、と特に後者の点でサキュバスと関連付けられることもあります。これはユダヤ教よりもキリスト教で顕著だそう。サキュバスと仲がいい・共通点が多いのはここからもあるのかな?
バースト版覚醒スキルの「苦痛のパトス」のパトスは、ラテン語で「情動、情念」の意。決して某アニメ主題歌歌詞とは関係ない…はず
ラッシュ版奥義の「魘夢のプフェーアト」のプフェーアトは同じくラテン語で「馬」の意。
奥義はメギド体の木馬と関係した名前になっていますが、メギド体が何故木馬なのかは分からなかった…
また、踊りが好きなのは『タルグム・シェニー』(旧約聖書「エステル記」の注釈版)における、ソロモン王の前で踊りを披露したという一節からと思われます。
アガリアレプト
三人娘の中では知名度低めな悪魔・アガリアレプト。
某ヘブライ語しか聞こえない漫画ではダンディー系でしたが、メギド72では男装の麗人です。
出典はヨーロッパの伝承。特に「グリモワール」と呼ばれる悪魔学の文献でその名が見られるそうです。
『真正奥義書』においては、ルシファーの配下で、サタナキアと共にヨーロッパ・アジアに住まうとされ、『大奥義書』では地獄の3人の支配者ルシファー、ベルゼブブ、アスタロトに仕えている6柱の上級精霊のうち1柱で、こちらもサタナキアとともに将軍・司令官を勤めているそうです。また、ブエル、グシオン、ボティスを配下に持つとかなんとか。某ヘブライ語しか聞こえない漫画は『大奥義書』の設定を踏まえてましたね
さらに、『アルマデルによるソロモン王の真の鍵』では、ベルゼビュート配下の悪魔とされており、彼と共にアメリカに住むとされています。
メギドがどのグリモワールを下敷きにしているかは分かりませんが、個人的には「ソロモン王」の名を冠した文献、そしてアメリカ≒ミュージカル繋がりで最後の文献を下敷きにしてるのかな?と思います。
あらゆる機密を明らかにする能力を持っているとされますが、メギド72ではそちらではなく、メギドラル製の時計でザ・ワールドクロックアップ時間の停止(自己の加速)を行うキャラになっています。こちらの元ネタは探しても見つからなかったので、メギドオリジナルの可能性が高いかも。
という感じで、メギドの元ネタ「さっくり」調べてみた、三乙女…三人娘…バレンタイン組編でした。
やっぱりだんだんとインターネットでは限界が見えてきた…本格的に書籍の導入を図ろうと思います。次からは祖メギドを番号順にやっていこうかな。
こんな感じでさっくり気ままに調べていきたいと思うので、よかったら今後もよろしくお願いします。
もしここの元ネタこれだよ!とかここ間違ってるで!とかありましたら、コメント頂けると嬉しいです。
【参考文献(インターネット以外)】
悪魔の事典(1992・青土社)
著:フレッド・ゲディングズ 訳:大瀧啓裕
地獄の辞典(1990・講談社)
著:コラン・ド・プランシー 訳:床鍋剛彦
メギドの元ネタさっくり調べてみた ①三馬鹿編
メフィスト、モンモン(契約者)を騙して自分の望みを達成しようとしたの元ネタのメフィストフェレス要素なんだけどあまりにも無知性なので気づくのが遅れた
— スナギモ (@h29omoikane) March 13, 2019
こちらのツイートを拝見して、「え、メギドってそこまで元ネタ入れてるの!?」とびっくりしたので、この際調べてみることにしました。
目指せ全メギド制覇!(多分無理)
というわけで今回は、俺たちイケメンこと「メフィスト(メフィストフェレス)」「カスピエル」「インキュバス」の3人の元ネタから。
なお、筆者はこの辺りの専門ではないうえ、(現時点では)インターネットを中心に「さっくり」知らべた情報なので、その辺りはご注意願います。そのうち書籍情報を盛り込みたい。
→2019.3.18追記 書籍『悪魔の事典』の情報を追記しました。
→2019.3.20追記 書籍『地獄の辞典』の情報を追記しました。
メフィスト(メフィストフェレス)
「契約して契約者を破滅に陥れる悪魔」の代表格として知名度も高く、様々なメディアで取り上げられることの多い悪魔・メフィストフェレス。
メギド72では「メフィスト」と省略された名称が公式名になっています。
出典は、ドイツに伝わる『ファウスト伝説』。
錬金術師、ヨハン・ゲオルク・ファウストが悪魔・メフィストフェレス(メフォストフィレスとも)を召喚し、死後の己の魂と引き換えに、現世での自身の望みを叶えるという契約を結ぶ…というのが有名な流れ。
その後の展開は、メフィストフェレスが契約に忠実に従いながらも、巧みにファウストを操作するという流れは大まかに共通しているようですが、作品によってメフィストフェレスが魂を手に入れられることもあれば、手に入れられない結末もあるそうです。
そもそも、メフィストフェレスがどういった悪魔なのか、という設定も作品によってまちまちなようで、有名ながらもはっきりとした実像は持たない悪魔と言えるかもしれません。
(実際、色んなゲームにメフィストフェレス出てくるけど設定バラッバラだもんね)
メギドのメフィストのギャンブラー要素・賭け事好き要素は、おそらくゲーテ作『ファウスト』の『天上の序曲』からと思われます。
これはざっくり説明すると、メフィストフェレスが主(神)に対して、ファウスト博士の魂を悪の道に持ち込めるか?という賭けを持ちかけるという下り。(ここも有名ですね)
最上位存在に向かって自分が勝てる!と賭けをふっかけるあたりから、もしかしたら大博打を好む性格が造形されたのかもしれません。
また、犬型のメギド体も、同じく『ファウスト』で黒い犬に化けてファウスト博士を誘惑する下りからと思われます。メギド体全然黒くないけど
→と思ったらリジェネメギド体は黒くなりましたね。モチーフはハイエナなそうなので、元ネタありきというよりは性格イメージからからなのかな?
カスピエル
三馬鹿の中では断トツで元ネタ知名度が低いであろう悪魔・カスピエル。(少なくとも筆者はメギドで初めて知った)
というかウィキペディアにもこれしか情報が無いんだよ!!!!!!(迫真)
えー、なので詳細は上画像を読んでいただければ事足りてしまうのですが、バーストカスピエルの特性が「ムーンコレクター」だったり、スキルや奥義名にも「夜」に関係するものが多いのは、月を司るという部分からだと思われます。得物が鎖鎌なのも、月と形が似てるからかな。
また、メギド体が檻に閉じ込められた姿なのは、名前の「神に閉じ込められた」からでしょうね。
関西弁なのは……なんでだろう……南に関連付けられるってあたりからかな……でも関西弁って「西」だよな……単純なキャラ付けかな……わかんないや……
というか原典伝承だと天使(ハルマ)だったりするんですね、びっくりした。
→ちなみに画像にもありますが、カスピエルはヨアンネス・トリテミウスの『秘密書法』でのリストに示された悪魔でもあり、現在この秘密書法の悪魔で実装されているのはカスピエルだけだったりします。もしかしたらカスピエルと縁故のある悪魔がここから出てくるかもしれないし…出てこないかもしれない…。また、この『秘密書法』でのカスピエルは、「秘密を南に告げる」役目を持つとされ、200体の召使いを持つそうです。
インキュバス
出典は古代ローマ神話やキリスト教に登場する男性型の「夢魔」。サキュバス同様、夢を操る力を持っています。
メギドでは性的な側面には一切触れられていませんが、本来は夢を見させて女性に悪魔の子を妊娠させるという、まあアレですね。そういう悪魔です。
キリスト教と悪魔と性の話は非常に複雑な話なので割愛して、スキルや奥義の元ネタを探っていくと、伝承元を踏まえてか全てラテン語で、
- ラッシュ版スキル「ファスキナーレ」
⇒「(目や舌で)魅了する」 - ラッシュ版覚醒スキル「ヒュプノインパーケ」
⇒「眠り」+「安らかに」 - ラッシュ版奥義「ドゥルケソムニウム」
⇒(調べても出てこなかった スミマセン)+「夢」 - カウンター版スキル「インクブスドルミーレ」
⇒「インキュバス(つまり自分のこと)」+「眠り」 - カウンター版覚醒スキル「フェルムプロピーナ」
⇒「鉄」+「乾杯」 - カウンター奥義「グランフィニス」
⇒「偉大な?」+「終わり」
と、こんな感じ。個人的にはファスキナーレが色っぽくて好きですね
メギド体や衣装の元ネタはちょっと分かりませんでした。もしかしたら書籍で出典があるかもしれない…
→書籍調べてもあんまりパッとした情報はありませんでした。ただ、インキュバスの語源に「悪夢」があるそうなので、サキュバスと異なり悪夢の状態異常が付与出来るのはそういうことなのかも。
また、インキュバスはサキュバスの子とされることもあるそうです。わーお。
という感じで、メギドの元ネタ「さっくり」調べてみた、三馬鹿編でした。
想定はしてたけどカスピエルの資料の乏しさが想定以上だった……。
でも、「物語(伝説)」「鬼神学」「キリスト教」と出典の全く異なる悪魔が集まって、仲良くしてるのってゲームならではというか、なんかいいなあと思ったりします。
三馬鹿やったので、次はチームイイ女(サーヤ達)を取り上げてみようかな。
こんな感じでさっくり気ままに調べていきたいと思うので、よかったら今後もよろしくお願いします。
もしここの元ネタこれだよ!とかここ間違ってるで!とかありましたら、コメント頂けると嬉しいです。
それじゃ、スタミナ溜まったしイベント周回戻ろうかな…
~流れだす俺たちイケメン~
【参考文献(インターネット以外)】
悪魔の事典(1992・青土社)
著:フレッド・ゲディングズ 訳:大瀧啓裕
地獄の辞典(1990・講談社)
著:コラン・ド・プランシー 訳:床鍋剛彦